ラブレター・フロム・ブラッセルズ

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第三十二回 Pacta sunt servanda (「合意は守られなければならない。」)

ブラッセル日和

もう2月も終わろうとしています。ブラッセルでは、時折,抜けるような青空が広がることがあるようになりましたが、その場合は,結構寒く、気温は0度をちょっと上回る程度であったりします。ただ、殆どの場合は、未だ、「小雨のち曇りのち雨」という「ブラッセル日和」が続いており、ドンヨリとした灰色の空の下、気温は、未だに、一桁台をうろうろしている毎日です。
 でも、よくよく目をこらすと、春の訪れの予感が感じられるようになりました。週末に散歩をすると、芝生は、ラッパ水仙やヒヤシンスの花で彩られ、古い住宅街にある桜の古木には、うっすらと桃色の花がちらほらと咲き始めています。季節は確実に動いています。空は,相変わらず灰色ですが、もう少しの辛抱、と言い聞かせる毎日です。

セミナー日和

こんな中、年末年始にはペースダウンしていた、各種のセミナーやラウンド・テーブルも、だんだんと開催の頻度が増してきました。2016年は、日ベルギー友好150周年の記念すべき年で、お陰様で、その関係の行事も多いのですが、「欧州パブリックディプロマシー担当大使」の仕事も、段々とペースアップしつつあります。
 1月末には、主要国で政策企画に携わっている政府・民間シンクタンク双方の関係者が集まる会合が、ブラッセルでありました。2月12日~14日には、ミュンヘン安全保障会議が開催され,昨年に引き続き、オブザーバーとして出席してきました。今回は、その前日の2月11日に行われた,公式のサイドイベントの一つであるNATOの対アジア政策に関するラウンド・テーブルに、スピーカーの一人として参加することができました。2月24日には、英国のロンドン大学キングスカレッジなどが主催し海洋安全保障の分野での日本NATO協力の可能性を議論するワークショップがブラッセルで開催され、具体的協力のあり方に関するセッションで喋る機会を頂きました。

Pacta sunt servanda(「合意は守られなければならない。」)

その後、2月26日には、ベルリン日独センターと独日法律家協会共催でベルリンで行われた「海洋法と海洋安全保障」に関するセミナーにお呼び頂き、「海洋ガバナンス」についての日本の視点についてお話しし、先日ブラッセルに帰ってきたところです。
 このセミナーは、色々な意味で,非常に勉強になりました。まず、関心の高さ。率直に言って、欧州でアジア関係の議論をする際の一番のチャレンジは、どのようにして欧州の人たちに関心を持ってもらい,参加してもらうかです。正直に言えば、最初にこのセミナーの標題を見たときは、非常に小規模な集まりになるのだろうと予想していましたが、さにあらず。100名以上を収容する日独センターの会場は、終日、殆ど満員の状況でした。これは、一つには、法律家協会の法律専門家の方々の関心にヒットした、という背景があるのでしょうが、やはり、現在南シナ海で起こっていることに対しては、欧州においてもそれなりに高い関心があると言うことの証左だと言えると思います。

更に言えば、この問題は、地球のどこにいても関係のある,重要な原則に関わる問題であるからだと思います。それは、「法の支配」であり、「国際法に従った行動」であり、より端的に言えば、「合意は守られなければならない。」という最も基本的な国際的な行動規範なのです。だからこそ、ウクライナ問題に日本が強い関心を持つのと同様の理由で、欧州の人たちもこの問題に共通の強い関心を持っているということなのだと思います。
 自ら選択して、合意し批准までした「国連海洋法条約」という国際規範に明確に示されていることに反する行動をとり、これまた同じ条約に明確に規定された手続きに沿って行われている仲裁裁判に出廷さえしない、というのは、非常に残念なことです。遠からず仲裁裁判の結果は出る予定ですが、その内容の如何に関わらず、当事者がそれを遵守し、それに沿って平和的に問題の解決を図るべきだ、というのが、会議出席者のコンセンサスであったような気がします。
Pacta sunt servanda「合意は守られなければならない。」というのは、当たり前の国際的規範なのです。

ちなみに、これから3月には、1日と2日にブラッセルで行われるGMF主催の日本三極フォーラムでパネリストを務め、7日には、デンマーク外務省とブルッキングスがコペンハーゲンで共催する「コペンハーゲン戦略対話」に出席し、18日~20日は、GMFブラッセル・フォーラム出席、と続きます。正に、セミナーの花盛りです。本業も含めて引き続き頑張ります。

 

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