ラブレター・フロム・ブラッセルズ

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第二十六回 運命の分かれ目

2015年11月27日

パリ連続テロ事件

 去る11月13日夜、パリで連続テロ事件が発生し、130人もの方々が亡くなりました。ここに、改めて、心からご冥福をお祈りしたいと思います。
 そのテロ事件には、ベルギー国籍の人物、または、ベルギー在住のフランス人の関与が言われています。また、ここブリュッセルでも、11月21日早朝には、テロ脅威度が最高の4(非常に危険な状態であり、事態は切迫している)に引き上げられ、地下鉄や学校は24日まで全面的に閉鎖されました。25日以降、地下鉄、学校共に、通常に戻り始め、26日には、ブリュッセルのテロ脅威度も,最高の4から、他のベルギー全土と同様の3(テロの可能性があり、発生し得る)に引き下げられました。しかしながら、特にベルギーに来訪またはお住みになっている皆様は、引き続き、大使館のホームページや領事・安全情報などをご覧になり、細心の注意を払って行動して頂ければと思います。

南スーダンと日本

lfb_026_icg4 話は変わりますが、11月17日午後、ブリュッセルのプレスクラブで、当館と国際的なシンクタンクであるICG(International Crisis Group)の共催で、「南スーダンにとってのチャレンジと国際社会の役割」と題するセミナーを行いました。マルタで開催された難民問題に関するEU・アフリカ・サミットに出席していたベンジャミン南スーダン外務大臣も、EUとの協議を兼ねてブラッセルまで足を伸ばされ、このセミナーに参加頂きました。同大臣は、基調講演をされただけで無く、14:00~18:00のセミナーの間中、出席し、色々な発言もされました。会場は、一時は立ち見が出るほどの状況で、当地での関心の高さを肌で感じました。
 ICGの会長は、元国連PKO局長で、欧州でも5本の指に入る論客で知られる、フランス人のゲエノさんです。ICGは、日本では余りなじみが無いかもしれませんが、ブラッセルに本拠を置くシンクタンクで、元々は、国際問題が深刻化する前に状況を察知し、元大統領などを含むハイレベルのボードメンバーがそれを国際的に発信し、国際社会の関与による解決を後押しすることを目的にして創設されたものです。この趣旨は現在も同じで、国際問題の現場、特に紛争地に人を駐在させ、そこから,非常に優れた生情報と分析を送り出すことを最大の強みとしています。今回のセミナーにも、現地に長く滞在し情勢に詳しいICGのアナリストであるコープランド女史がパネリストの一人として参加し、地に足のついた議論をして頂きました。

lfb_026_icg1 ご存じの方も多いと思いますが、日本は、2011年7月の南スーダン独立から余り間の無い2012年1月から,国連PKOの一部として、首都ジュバに施設部隊を派遣しています。現在も約350名の施設部隊が、自衛隊の得意分野を活かしたインフラ整備などにより、南スーダンの自立的発展を支援し、ODAやNGO等とも連携しています。
 また、ジュバには、JICAの事務所があり、厳しい環境の中、専門家の方々の努力で、南スーダンの農業開発のためのマスタープランの作成など、現地の方々の要望に添った開発のお手伝いをしておられます。

なぜ南スーダンなのか?

lfb_026_icg2 それでは、なぜ南スーダンなのでしょうか。独立前のスーダンは、アフリカ最大の面積、人口でも5000万近くで6位という大国でした。独立した南スーダンは、人口1100万人ですが、油田を自国内に持つなど、発展のポテンシャルを持った国です。このような国に対して、要望に応える形で早い段階で国際社会が一致して協力すれば、PKOやODAの活用によって、この若い国を良い方向に導くことが可能なのです。
 一方、アフリカの他の地域に目を転じれば、最近よく話題になる「脆弱国家」が存在します。政府が弱く、基礎的なサービスを提供できないばかりか,国境の管理もできず、過激分子の流入を招くという事態は、少なからぬ国で、深刻な問題になりつつあります。早い段階での国際社会の協力無しには、状況は益々深刻化し、結局のところ「軍事的対応」以外は選択肢が無くなる事態になりかねません。南スーダンは、正に、その「運命の分かれ目」にあり、日本のような国が、その将来を良い方向に導くために協力していることは、誇って良いことだと思います。

Ownership, Partnership & Commitment

lfb_026_icg3 今回のセミナーには、在スーダン日本大使である紀谷大使と、古川JICA事務所長にもわざわざおいで頂き、パネリストとして,大活躍して頂きました。現地の生活は,非常に厳しいようですが、南スーダンの発展のために、日々努力しておられるお二人には,頭が下がる思いです。
 セミナーを通じて明らかになったのは、サブタイトルの3つのキーワードの重要性です。南スーダンの方々のオーナーシップ、国際社会との協力のパートナーシップ、そして、関係者のコミットメントです。その中でも、何よりも、南スーダンの人々が,自らの問題として、オーナーシップを持って発展のプロセスを進められるようにすることが重要だと感じました。関係者の方々、ご協力,どうも有り難うございました

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