白中銀年次報告書(2012年)

平成25年3月8日

2月22日,白中銀が経済・金融情勢に係る2012年年次報告書を発表したところ,概要以下のとおりです。

  1. 経済概況

    1. 2012年の白の実質GDP成長率はマイナス0.2%となり,白は世界経済の緩慢な回復の揺らぎや,特にユーロ圏の危機から抜け出すことができなかった。経済活動の停滞は直ちに雇用に影響を及ぼし,年間に17,000の雇用が失われ,失業率は2011年の7.2%から2012年には7.4%に上昇した。個人消費はマイナス0.7%となり,住宅投資には陰りが見られ,企業の投資は減少し,銀行の融資条件はタイトになった。純輸出の対GDP貢献度はプラスであったが,それは主に輸入の伸びの鈍化によるものであり,輸出それ自体は息切れ状態である。
    2. 潜在経済成長率を強化するうえで,労働供給,競争力,イノベーション,生産性が重要となる。2012年,連邦政府は労働市場の構造改革を実施し,55歳から64歳の就業率を上昇させるための年金改革を行ったが,効果は限定的で,また,年金受給者数の減少分が就業年数の延長による平均年金の増大分と相殺されたため,年金支出の削減はわずかであった。平均寿命の延長を考慮した,追加での大胆な対策を講じる必要がある。
    3. 労働供給における質の向上のため,企業のニーズにより即した教育を実施し,不十分なスキルのまま退学する若者の数を減少させ,職業キャリアにおける体系的な職業訓練を制度化する必要がある。また,外国出身者の労働への取り込みが,潜在経済成長率の強化につながる。持続可能な雇用創出のためには,労働コストの上昇に生産性の向上が伴う必要がある。白の世界経済への統合が進むかどうかはその競争力強化のあり方に依存し,具体的には価格やコスト面での競争力のほか,製品の質・多様性,生産過程の組織化等によるイノベーションの促進といった非具象的な要素も関係してくる。
    4. 白は多くの点において脆弱性を抱えている。インフレ率は2012年は2.6%となり,これまで以上に原料価格の変動に左右され,最も重要な近隣の3ヵ国(独,仏,蘭)よりも高くなった。インフレの進行は,自動的な物価スライド制度を通じて民間部門の時間給の上昇をもたらし,2012年の上昇率は3%となった。白の労働コストは生産性の低さのため,1996年と比較して約13%も上昇し,3ヵ国のどれよりも高くなっている。より長期的にみると,白は3ヵ国よりも多く輸出市場を失っている。白は先進国の中でも,労働への税関連の圧力が非常に高く,労働コストの上昇と雇用の提供への圧力につながっている。そのため,財政の持続可能性を害することなく,税改革及び税制の簡素化を行うことが望ましい。
    5. 経済成長を促進するためには,経済全体の生産性の向上及び競争力に関する制約の軽減を図るとともに,起業とイノベーションを促進し,起業や市場アクセスの阻害要因を取り除かなければならない。また,研究開発の促進及び生産者のネットワークと研究センターの創設が重要となる。公的行政機関による認可に係る支援や,起業家による新事業への資金獲得が必要となる。
  2. 金融

    1. 白の銀行は,白貸付市場において個人及び法人に対し引き続き活発に活動しているほか,特に戦略的に重要な中・東欧においてもプレゼンスを確保している。他方,いくつかの大手金融機関は,不良債権を処分しなければならない。
    2. デクシアに関しては計画が修正され,デクシア・グループにおける資産運用部門の売却と,仏政府が最大株主となる新たな金融機関へのデクシア・ミュニシパル・エージェンシー(DMA)の譲渡が予定されている。デクシア銀行には,白及び仏政府により55億ユーロの資本増強と,白・仏・ルクセンブルク政府の3ヵ国により,最大で850億ユーロの保証が与えられることとなり,白政府の負担は約110億ユーロ軽減される見込みである。
    3. KBCグループに関しては,2012年12月,連邦政府から注入された公的資金の元本30億ユーロに15%のペナルティを加えた額の返済手続きを開始した。2013年からは,銀行の新自己資本規制であるバーゼルIIIを遵守しなければならないため,12.5億ユーロの株式発行を行うとともに,2013年の第1四半期において7.5億ユーロの株式発行を表明し,自己資本の強化を行っている。
    4. いくつかの国は,伝統的な預金業務とリスクの高い投資銀行業務の分離のための抜本的改革を計画している。同分離により,伝染(contagion)効果が抑制される一方で,完全な分離により,金融商品の取引における支障や顧客にとっての不利益が生じ得たり,金融機関の弱体化さえ招き得る。そもそも,このような改革は,欧州では1ヵ国のみで実施することはほぼ不可能であり,本件は欧州委員会において引き続き協議される。
    5. 白の銀行は,競争的な国内市場に集中している顧客を対象に実施する伝統的な金融仲介活動から主要な収入を得なければならない。なお,金融仲介機関のリスク管理において,債務支払い能力(ソルベンシー)と流動性に関する規則は非常に重要となるが,白の金融機関は,バーゼルIIIの要求を既に満たしているはずである。
  3. 財政

    1. 共同体及び地域政府,そして特に連邦政府の努力により,構造的財政赤字は2012年には対GDP比で約1%改善し,財政赤字は2011年に対GDP比3.7%だったのが2012年には3%となった。
    2. 政府債務残高は,2011年に対GDP比97.8%だったのが2012年末時点で99.6%と悪化した。この割合は,ユーロ圏平均を上回っているが,2000年には40%も超過していたものが,2012年には7%に下がっており,ユーロ圏平均とのギャップは縮まりつつある。
    3. 高い公的債務比率と少子高齢化による社会コスト増大を考慮すると,財政健全化の努力及び安定化プログラムの継続が重要となる。そのためには,2013年の予算執行において注意を払うとともに,必要に応じて調整するのが望ましい。
    4. GDPに占める政府支出は50%を超えており,2000年の42.5%から増大している。この支出膨張の傾向は,連邦・共同体・地域政府及び社会保障において観察され,潜在的な経済成長の鈍化に対応していない。
    5. 財政健全化は全ての政府レベルで行われる必要がある一方で,連邦政府とその構成体との間での緊密な予算調整が求められる。各主体が中期的に予算上の目標を達成するようコミットすることが重要となる。