第三十一回 遠いようで近い?
サロン・デ・バカンス
2月に入ってからの150周年イベントの一つは、サロン・デ・バカンスです。バカンスについては何でもありの巨大見本市であるサロン・デ・バカンスは、年に一回この時期にブリュッセルで開催されますが、今回は、日本がゲスト国になりました。会場入り口正面には日本の旗が立ち、アジア諸国を中心としたパビリオンの中心にある日本の大きなブースは、ステージと桜の木が美しく、開催中、多くのお客様で賑わいました。
接客していた皆さんによると、昨年までは「日本に行きたいんだけど・・・」といった一般的な話が多かったようですが、今年は、「X月にAとBという都市に行って、αをしたいのだが、パンフレットがほしい。」といった、具体的な照会が中心のようです。2015年に訪日された外国人数は、前年から約50%アップし、1900万人に達し、初めて外国に旅行した日本人の数を越えました。訪日したベルギーの方の数も、暫定的な予想では、2104年の19000人から約30%増加し、27000人程度になったようです。
「3つのC」
御挨拶をする機会があったので、私からは、「日本の魅力は3つのCだ!」と説明し、2016年には、ベルギー人の訪日数50000人にしたい、とお願いしました。
(1) Cool;日本食はクール!
(2) Cheap;日本が何でも高いというのは神話。円安効果だけでも、2~3割割安!
(3) Convenient;全日空のブリュッセル・成田直行便をどうぞ!
この中でも、特に、「日本は遠くてね。」と言われることがしばしばあります。直行便ができたとはいえ、飛行時間は約12時間。距離で言うと、ブリュッセル-東京は、約9500キロで、ブリュッセル-ワシントンの6200キロ程度の約1.5倍。北京までよりも約1500キロ遠いです。ただ、ブリュッセル-東京は、ブリュッセルとケープタウンや、リオデジャネイロと同じ程度の距離です。要は、これは、魅力さえあれば、越えられない壁ではないと思います。
遠いようで近い?近いようで遠い?
距離と言えば、北朝鮮による再度の事実上の長距離弾道ミサイル実験は、度重なる安保理決議に違反する暴挙で、決して容認できないことですが、同時に、それが日本の安全保障にとって何を意味するのかは、冷静に分析し、対応を考えるべきでしょう。
今回の飛翔体は、一般にはテポドン2改良型と言われ、目指す射程が約13000キロと推定されています。実際、韓国国防省は、今回の「実験」に基づき、今回の飛翔体が目指す射程能力を約12000キロ~13000キロではないかとの推定を発表しています。ちょっと気になったので、実験が行われた北朝鮮西部の東倉里(トンチャンリ)から、いくつかの都市までの距離を調べてみました。
◾東京までは、約1400キロ弱。ちなみに、北朝鮮は、射程1500キロ~2000キロのノドンミサイルを多数配備済みであり、日本をターゲットにするなら、テポドンの開発は必ずしも必要ではありません。
◾なお、意外と知られていないのは、東倉里から北京までの距離。700キロ超で、東京までの距離の約半分です。
◾アメリカに目を向けると、ワシントン、NYまでが、約11000キロ。サンフランシスコやロサンゼルスは、それよりさらに近く、約9000~9500キロです。従って、このミサイルが、米国本土を射程に入れることを想定して開発されているのは明白です。
◾それでは、念のため、ヨーロッパまでの距離はどうでしょうか。まず、モスクワは約6300キロ、ブリュッセル、パリ、ロンドンが、約8400~8700キロ弱で、一番遠い首都だと思われるリスボンでも、約10100キロ超。要するに、あくまでも能力と距離という客観的な要素から見れば、
(1) 欧州全土は、ワシントンやNYよりも北朝鮮のミサイル基地から近く、
(2) テポドン2が成功裏に配備される場合には、欧州全土をカバーする能力を持つことになる可能性がある、ということです。
誤解が無いように申し上げますが、北朝鮮が、欧州をターゲットにしている、ということを言うつもりは全くありませんし、それを示す情報もありません。ただ、地球は丸く、想像上の距離は、時には我々を欺く、ということです。ともかく、欧州とアジアは、「遠いようで近い関係」なのです。
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