第四十三回 日本とベルギーの共演
菊祭り
ハッセルト市にある日本庭園については、このコーナーでも何度かご紹介しました。姉妹都市である伊丹市から寄贈された本格的な日本庭園で、欧州では最大の規模。年間約65,000人もが訪れます。園内には、それぞれの季節に美しい花が咲き、立派な茶室や展示のためのスペース、更には、小さな神社まであります。
そのハッセルト日本庭園では、2年に一回「菊祭り」を開催しています。ちょうど今年がその年に当たり、私も、先日、オープニングに出席させて頂きました。10月1日~9日に開催されていますが、その期間には、音楽や能などの色々なパーフォーマンスも予定されています。
今年の菊祭りは、友好150周年を記念して、日本とベルギーの共演です。 まず、ベルギー人のフローラル・アーティストであるトマス・デ・ブリュ―インさんが、園内の5ケ所に、美しい菊のモニュメントを作り上げました。トマスは、春に行われたゲント市でのフラワーショーでも、教会の中に大規模なアレンジメントを制作した、有名な若手アーティストです。彼の案内で庭園内を歩きましたが、一つ一つのモニュメントに特別の思いが込められており、また、背景となる庭園の風景とマッチさせるように、色どりや形に色々な工夫をされた、素晴らしいものでした。
日本からは、同じく花匠の佐々木直喜さんがおいでになりました。佐々木さんは三重県のご出身で、先日のG7伊勢志摩サミットでも、生け花の一部を担当された由です。佐々木さんの作品は、池に面して建つ茶室の一室に飾られた着物と花の共演で、着物の裾が途中から同系色の菊の花のアレンジに変わっていくという、素晴らしいものでした。
この機会に、新種の菊のお披露目もありました。その菊は、150周年友好大使でいらっしゃるファンロンパイ前欧州理事会議長の名前を付けられました。濃い赤紫色をした気品のある佇まいの菊です。ちなみに、名付け親には、光栄にも私の家内が任じられ、菊の花全体にシャンパンをかけるという大役を無事果たしました。
平和の鐘とカリオン
ハッセルト日本庭園では、今回の菊祭りに合わせて、もう一つの企画がありました。それは、園内に「平和の鐘」を設置することです。庭園の奥には小さな神社があるのですが、この鐘はその神社と散歩道を挟んだ反対側に今回新しく設置されました。小さいながらも、立派な鐘楼を備えた日本風の美しい鐘です。この鐘は、ハッセルト市の方々が広島と長崎の平和の鐘から着想を得たもので、「鐘を鳴らすことで、世界中の平和と友好を祈る。」と日本語とフラマン語の両方で記されています。 私は、ハッセルト市の副市長、リンブルグ州知事と共に最初に鐘を撞く光栄を得ました。広島県出身の私としては、特別の感慨があるイベントでした。
鐘と言えば、もう一つの日ベルギーの共演がありました。 私と家内は、9月24日には、結城市と姉妹都市であるメッヘレン市で開催された国際カリヨン・シンポジウム「鐘が繋ぐ日本とベルギー」に出席しました。メッヘレンは、教会に置かれメロディーを奏でるカリヨンという鐘で有名で、当日も、ベルギー、日本双方のカリヨン演奏家が共演するコンサートがありました。私たちは、晴天の元、カリヨンが演奏される大聖堂を見上げる広場に座り演奏を楽しんだのですが、これは、特別な経験でした。カリヨンの演奏は、まるで天上から下りて来る天使の囁きのように思えます。音の来る方向を見上げると、教会の塔。それが真っ青な空を背景に立ち、その後ろには真っ白な飛行機雲が何筋もあり、まるで天使が飛んでいるように見えました。
実は、カリヨンは、ハッセルト市にとっても特別なものです。伊丹市には、ハッセルト市から寄贈されたカリヨンの塔があるのです。ハッセルト市の日本庭園は、このカリヨンの塔の寄贈に応え、伊丹市から送られたものなのです。
国王王妃両陛下をお迎えして
思い返すと、2年前の9月12日に着任した私がブリュッセル市以外で最初に出席したイベントが、前回のハッセルト日本庭園での菊祭りでした。そして、今回の菊祭り開会式出席は、来る国王王妃両陛下を国賓として日本にお迎えする前の、ベルギーでの最後のイベントになりました。
フィリップ国王陛下、マチルド王妃陛下は、10月10日~15日まで日本を御訪問になります(10日は非公式日程)。私と家内は、両陛下ご一行をお迎えするために、事前に日本に用務帰国する予定です。
この御訪問は、間違いなく友好150周年を祝福するクライマックスになることでしょう。御訪問の様子について次回LFBで皆さんにご報告することを楽しみにしています。
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