第三十五回 「冬」も終わりか?
2016年5月9日
3月31日にLFB34を掲載してから、1ヶ月以上のお休みとなりました。言い訳を兼ねて、過去1ヶ月の間にあった2つの大きなイベントについて、お知らせしたいと思います。
ゲント・フロラリア
4月22日、遂に、待ちに待ったゲント・フロラリアがスタートしました。前回のLFBでも申し上げたように、ゲント・フロラリアとは、1830年のベルギー独立より早く、1808年にゲントで始まったフラワー・ショーで、その歴史は,有名な英国のチェルシー・フラワー・ショーより半世紀以上も長く、今回で208年、35回目(これまで原則5年に一回の開催)を数えます。今年は、日ベルギー友好150周年にちなみ,日本が「ゲスト国」として招待され,4つ有る会場の一つでは,活け花などの日本に由来するものを中心に展示されました。
正式の開会に先立つ4月21日には、国王王妃両陛下がお出でになり、会場を見学されました。両陛下が最初にお出でになったのは、日本関係の展示がしてある会場で、私も、家内と共にご一緒し、親しくお話をする光栄に浴しました。会場では、まず、今回のフロラリアに合わせてベルギーに来訪された勅使河原茜 草月流家元の大規模な作品が展示されていましたが、両陛下はそれに高い関心を示され、現場におられた茜家元と暫くお話をされていました。
それから、日本の生け花の各流派の作品の展示を観賞された後、多数の盆栽が展示されている部屋に入られました。両陛下は、盆栽にも強い印象と関心を持たれたようで、私に対して色々なご質問をされました。分かる範囲でお答えしましたが・・・
そして、その会場から屋外に出たところには、今度は、有名なベルギー人のフロリストであるダニエル・オスト氏による、大きな作品が展示されていました。これも、茜家元の作品と同様に,非常に印象的なもので、両陛下は、暫く足を止められ、その場におられたオスト氏の説明を聞いておられました。オスト氏は、昨年日本から差し上げた勲章を胸につけておられ、両陛下からは,それについてもご質問がありました。
展示場の出口には、ゲント市と姉妹都市関係にある金沢市からこの機会に贈られた日本庭園がしつらえてありました。兼六園を模したもので、泉や灯籠に枯山水、更には、「雪吊り」と呼ばれる,樹木を雪の重みから守るための仕掛けも再現されていました。ゲント市と金沢市の姉妹都市関係は、今年で45周年を迎える長い関係です。両陛下は、それを記念して来訪された金沢市副市長ご一行と言葉を交わされる機会もありました。
正式に開会となった翌4月22日には、会場内のミュージック・ホールで、茜家元による生け花のデモンストレーションが行われました。私には、その全てをお伝えする文才が無いのですが、ともかく、一言で言って、本当に素晴らしいイベントでした。 小さなものから始めて,家元が、自然に語りながら、どんどんと作品を作っていかれるのですが、その過程が観客の方々の目を釘付けにするのです。
私の印象に残った家元の言葉を一つご照会すると、「外国のフラワー・アレンジメントは、色々な花を「足していく」作業。日本の生け花は、色々なものを「減らしていく」作業。」ということです。外国の作業が、花を「プラス」して形を作っていくものだとすれば、日本の生け花は、枝を切り取り「マイナス」しながら,空間を作っていく作業だ,と言うことだと理解しました。枝も花も、一旦切り取ると元へは戻りません。相当の緊張感をもちながら、その場で明確なビジョンに沿って次々と「マイナス」の決断をしていく家元を見るのは、非常に高揚感のある経験でした。
デモンストレーションは、1時間半にも及びましたが,最後の作品は、1000人を収容するホールのステージ一杯に広がる巨大なもので、完成に30分程度を要しました。そのプロセスと出来上がった姿を見た感動は、その場に居た人で無いと感じられない、非常に貴重な経験でした。
「信頼と友情と団結」の証
私が、このデモンストレーションが始まる前のスピーチで申し上げたことがあります。それは、3月のブリュッセル連続テロ事件の直ぐ後、という難しい時期に、草月流の家元がベルギーを訪問される、ということは、相当の決断で有り、これこそが、日本がベルギーという国と国民の方々に対して持つ、強い信頼と、友情と,団結の証である、ということです。家元のご来訪無しには、このゲント・フロラリアの日本館の成功は無かったと思います。茜家元とスタッフの皆様、改めて,心から御礼致します。
総理欧州ご訪問
もう、テレビでも報じられていますので、短く言及するに留めますが、5月1日にゲント・フロラリアが閉幕した2日後の5月3日には、安倍総理ご夫妻が、欧州歴訪の一環で,ブリュッセルを訪問されました。これは、5月1日~7日の1週間で6ヶ国を回ると言う、正に特急強行軍で、ベルギーでのご滞在も1泊、実質24時間でしたが、その間総理は、国王陛下表敬、ミシェル首相との首脳会談と昼食会、EU首脳との会談と夕食会、更には、「投資セミナー」でのご挨拶と、多忙な日程をこなされました。
総理ご訪問の際も、キーワードの一つは「友情と団結」でした。安倍総理ご夫妻は、ベルギー到着直後に自爆テロがあった地下鉄マルベーク駅で献花し黙祷を捧げられました。そして、ベルギー側との諸会談では、この苦しい時に、日本は常にベルギーと共にあることを強調されました。ミシェル首相との会談では、日本とベルギーとの間でテロ対策に関する協議を今年末までに開始することに合意するなど、色々な前進もあり、素晴らしいご訪問であったと思います。
「冬」も終わりか?
総理訪問も終わり、ふと気づいてみると、異例の(?)晴天続き。気温は20度代前半に上がり、屋外では、半袖姿の人々が目につくようになり、夜も、21:00頃まで明るい日々となりました。これからの数ヶ月、ベルギーは、1年で最も素晴らしい季節を迎えます。成田とブリュッセルとの間の全日空の直行便も、関係者の皆様の努力も有り、既に、4月11日から再開しています。ベルギーでは、これからも、150周年記念の色々なイベントが目白押しです。皆さん、是非ブリュッセルにおいで下さい!
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