白中銀年次報告書(2013年)

2014/3/11

今般,白中銀が2013年年次報告書を発表したところ,要点以下のとおりです。

【ポイント】

  • 2013年の白経済は第2四半期から消費と輸出が牽引し活性化。年間成長率はプラス0.2%。
  • 他方で企業の設備投資及び住宅投資は減少し,銀行貸付も低迷。雇用環境は悪化し,失業率は8.4%まで上昇。インフレ率は1.2%まで減少。
  • 財政赤字は対GDP比で2.7%(2012年は4%)に改善したが,財政支出はGDPの51%と高く,引き続き支出を抑制すべき。
  • 高齢化に伴う社会保障費増大を要警戒。財政再建に加え,定年年齢の引き上げとそれに伴う労働供給への貢献が必須。
  • 競争力を高めるため,賃金コストの抑制,イノベーション,研究開発への投資及び労働の質強化が必要。

【本文】

  1. 2013年の白経済概況

    1. ベルギーは,ユーロ圏において景気が危機前の水準に回復した希な国の一つ。2013年第2四半期から,特に個人消費と輸出を推進力に経済活動が活発化した。しかし,前年の経済停滞の影響で,年間の成長率はプラス0.2%にとどまった。11,000単位の雇用が失われ,失業率は年末には8.4%まで上昇し,25歳以下の若者の間では20%を超えた。内需不振に加え,原材料価格の低下,電気・ガスのより競争的な価格決定,さらには2012年末に連邦政府が着手した賃金抑制の影響で,インフレ率は2.6%(2012年)から1.2%(2013年)に減少した。また,消費者物価指数改革と実質賃金凍結の影響により,民間部門の時間当り賃金上昇率は3.7%(2012年)から2.2%(2013年)に減少した。
    2. 企業の設備投資及び住宅投資は2012年に引き続き減少。銀行が融資条件を緩和する一方で,需要減で,民間企業(非金融)及び家計に対する銀行貸付は伸び悩んだ。他方で相当数の小企業が引き続き資金繰りの困難に直面した。
    3. 貸付需要の減少や生命保険の申し込み減によって,金融取引の量は停滞し,景気回復に重くのしかかった。金融業において,2013年の利益の大部分は臨時収入,とりわけ株のキャピタルゲインに起因した。しかし現在の利子率の低さに鑑みると今後は期待できない。
    4. 過去2年で,金融部門の再編,財政赤字縮小,年金改革,労働市場改革が進められ,企業の競争力強化のための施策が実施されてきた。しかし今後も,進むグローバル化,気候変動,そして何より,高齢化のコストといった課題があり,未来のために準備し続けるべきである。特にベルギーでは高齢化に伴う社会保障費の増大が顕著。「高齢化に関する調査委員会」によると,高齢化のコストは2060年にGDPの5.4%になると試算されているが,これとて不確実な予測であり,高齢化に関する欧州の作業グループ「Ageing Working Group」などはそれ以上のコスト増を予測している。高齢化に対応するためには,潜在成長力を引き上げ,財政を健全化し,安定した金融制度を確立するための一貫した行動計画の策定が必要である。
  2. 財政再建

    1. ベルギーは,2012年の是正期限までに過剰財政赤字を是正できなかったことから,2013年6月,EU財務相会合(ECOFIN)はベルギーに対して適用中の過剰財政赤字是正手続をより厳しくすることを決定し,その甲斐あって,2013年以降,財政赤字は縮小し,対GDP比で,2012年の4%から2013年には2.7%に改善した。
    2. 2013年春の安定プログラムで定められた財政再建への道のりは,政府債務の早期縮小に寄与するであろうが,高齢化に伴う社会保障費の増大を相殺するには十分でなく,定年年齢の引き上げが必須。定年年齢引き上げは高齢化に伴うコストを低下させるだけでなく,労働力の供給にも貢献し,潜在成長力の低下に歯止めをかける。
    3. 財政支出はGDPの51%に達している。政府介入の質と効率を改善し,支出を制御することが重要。この点,労働市場への参加を促すための支出は非常に効果的。就労は,経済を支えるだけでなく,貧困や社会的逸脱に対する最良の保障となる。
    4. 追加的な歳入の当てはなく,むしろ勤労所得にかかる高額の負担(税・社会保険料負担)を減らす必要がある。この高額負担こそが,ベルギーにおける賃金コストが近隣国と比較して高いことの主たる要因であり,このことは,競争力,雇用創出,そして経済活動に対する脅威である。「競争力と雇用のための協定」は,2015年,2017年,2019年に,各4.5億ユーロずつ,3度の負担軽減を見込んでいる。労働コストの軽減は財政支出の削減によって担保され得るが,それがうまくいかない場合は,間接税,環境税,財産収入にかかる税といった別の財源に頼ることになる。
  3. 競争力の強化

    1. 潜在成長力を高め,雇用を増やし,社会保障の基盤を強化するため,一連の改革が急務。小国開放経済において,基本的に繁栄は競争力に依存する。グローバル・バリュー・チェーンに入り込んでいく企業の能力が重要。
    2. 価格及びコストに関する競争力について,ベルギーは近年脆弱であった。賃金コストに関しては近隣3カ国(独,蘭,仏)と比して著しいハンディを背負っており,2013年の白の賃金コストはこれら隣国平均よりも4.8%高かった。これを解消するため,2012年末に決定された賃金抑制策と,「競争力と雇用のための協定」で予定されている施策を引き続き推し進め,ベルギーにおける賃金コストを抑制し続けることが不可欠。賃金コストを生産性,競争力維持,雇用促進と結びつけるための賃金水準設定の方法について考える必要がある。
    3. 世界経済への統合を進めるために,短期的にはコスト抑制が必要だが,長期的にはイノベーション能力が欠かせない。この点について重要な責任を負うのは民間企業である。また,経済に活気を与えるには研究開発への投資が必要不可欠であるが,ベルギーでは政府による研究開発投資が不十分であり,特定分野あるいは特定企業にR&Dの投資が偏っている。欧州2020戦略で掲げられたGDP比3%達成を目指してさらなる努力をすべき。さらに,生産者と研究センターの間により多くのネットワークを形成し,近代的で効率的な行政によって,企業マインドを刺激すべきである。
    4. 活気ある経済は,質の高い十分な労働力によって支えられる。この点,教育・職業訓練への投資及び求職者支援は優先分野となる。