第四回 2つの40周年
2014年11月17日
早いもので、ベルギーに着任してから、既に2ヶ月が過ぎ、このコーナーも4回目になります。お陰様で、10月21日にはフィリップ国王陛下に信任状を奉呈し、名実ともに、駐ベルギー日本大使になりました。これから、ますます活動の幅を広げていきたいと思います。
さて、今回は、ベルギーでの日本企業の活躍について。ベルギーでは、250弱の日本企業と、3000人程度の日本人ビジネスマンとその家族が活躍しておられます。EU本部があるという国柄、この地に欧州統括を置く会社も少なくありません。また、欧州の「へそ」の場所にあり、どこに行くにも近く、アントワープを始め物流の拠点があることから、相当早い段階でベルギーに投資をした会社もあるのです。中でも、ホンダは、1962年に海外での最初の生産拠点としてベルギー・ホンダ・モーターを設立し、一昨年で50周年を迎えました。また、これ以外にも、テルモ、ダイキンなど、既に40周年を迎えた会社も、いくつかあります。
実は、私は、9月12日にベルギーに着任してから1ヶ月も経たない内に、2つの日本企業のベルギー進出40周年の記念式典に出席させて頂く栄誉を得ました。それは、カネカ・ベルギー社と、日東ヨーロッパ社です。
カネカは、大阪に本拠を置く化成品、機能性樹脂などを生産する会社で、近年、食品やライフサイエンスなどの分野でも活躍しています。ベルギーでは、1974年に、アントワープ州ウェステルロ市で操業を開始し、現在、同地で300名以上を雇用し、機能性樹脂(塩ビサッシの材料、繊維素材の強度増強等に利用)、発泡ポレオレフィン(車のバンパーの芯材等に利用)、変成シリコンポリマー(建築用シーリング材や接着剤等として利用)を製造しています。
日東電工は、これまた大阪に本社を置き、各種産業用テープや、ディスプレイの保護フィルムなど、各種の分野で活躍しています。ベルギーでは、1974年にリンブルグ州ゲンク市に工場を開き、現在、同地で約650名を雇用し、自動車産業向けの補強材や制振材、各種産業向けテープなどを製造しています。
この2つの会社は、たまたま、ベルギーに進出した年が同じで、大阪を本拠とすることを除けば、全く異なる企業です。しかし、その場のご挨拶でも申し上げたのですが、この2つの記念行事に出席してみて、私は、色々な共通点があるような気がしました。
第一は、やはり、経営陣の方々の先見性とリスクを取るチャレンジ精神だと思います。ウェステルロ市は、カネカの最初の海外生産拠点です。その際の投資額は、その時点の資本金を上回る額だと聞き、驚きました。日東電工は「チャレンジ精神」をモットーとする会社だと聞きましたが、当時の写真を見ると、建屋も何も無いゲンク市の一角の更地に、何のベースも無く進出するのは相当の決断だったと思います。それ以降、道は常に平坦では無かったと思いますが、初志貫徹で、色々な困難を乗り越えてこらたことに敬意を表したいと思います。
第二は、ベルギーの地元自治体の一貫した支援です。カネカ・ペルギーの式典には、現役の地方政府の関係者に加えて、40年前の進出当時に支援を得た元市長の方もこられており、40周年を我がことのように、喜んでおられました。日東ヨーロッパの式典では、リンブルグ州知事、ゲンク市長、州の経済団体の関係者が、皆さん顔を揃えて、これからも日東がゲンク市で発展することへの期待を述べておられました。率直に言って、ベルギーは、賃金が高く、税制も複雑かつ頻繁に変わり、ビジネス環境はなかなか厳しいところです。しかし、そこは、地元に根付いて雇用を作り出している企業の強み。これまで築いてきた人間関係に基づいて、何らかの解決策を見いだしてこられています。私の一番大事な仕事は、日本ビジネスの支援ですので、私にも出来ることがあれば、今後お助けしたいと思います。
そして、最後に、今回一番印象が強かったのは、働いておられる方々の気持ちです。それは、一つの「家族」のような雰囲気です。カネカの式典は、働いておられる方々とそのご家族が参加された大規模なものでした。私が夜10時過ぎに失礼してから、本番のダンスが始まり、終了は深夜を越えたと聞きました。日東では、記念式典自体は幹部のみのご出席で、私はそこで失礼しましたが、その後、ご家族を含めた皆さんが、何と、地元のサッカースタジアムで盛大なパーティーをされたようです。やはり、この雰囲気、大変な時も、うまく行っている時も、皆で協力して企業をもり立てるという感覚が、長続きする企業進出には欠かせないのだと思います。
ちなみに、私は、両方のご挨拶で、10年後の50周年の記念式典にも是非参加したい、と申し上げたのですが、どうなるでしょうか?
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