第十三回 今を生きる
2015年4月7日
先日、世界最長寿と認定されていた大川ミサヲさんが、117歳でお亡くなりになりました。私事ですが、同じく先日、20年ちょっと前の書記官時代に在米国大使館で御世話になった大使がお亡くなりになりました。一方、同じく在米大で一緒に働いたことのある仲の良い外務省の同僚が、49歳の若さで急死しました。「生きること死ぬこと」、そして「今を生きる」ことの重要性を強く感じた1週間でした。
この機会に、いくつかの国の人口動態、平均寿命、老齢化の傾向について、少しお話ししたいと思います。これらは、一国の国力の大きさや、今後の趨勢を図るうえで、一つの重要な指標になっているのです。
まず日本です。日本は、世界一の老齢化国家として知られています。平均寿命は世界1位の84歳(男性80歳(5位)、女性87歳(1位))。経済成長との関係では、総人口に占める非労働人口(15歳未満、65歳以上)の比率(以下、「依存指数」と呼びます。)が減っている間は「人口ボーナス」があると言われ、それが増え始めると老齢化が始まり経済成長も鈍化する(「人口オーナス」)と言われます。日本では、依存指数は1990年代中ごろから増加に転じました。今や日本は、人口の4人に一人が65歳以上であり、65歳以上の老年人口対労働人口(15歳~64歳)の比率(以下、「老年人口指数」と呼びます。)は、2013年で40%を超えています(2.5人の労働人口が1人の老年人口を支えている。)。ただ、これを前向きに見れば、このような人類史上未曾有の老齢化に対応するシステムを構築すれば、それは、他の国の老齢化への対応のモデルになることは間違いありませんし、新しいビジネスチャンスとも言えるでしょう。
一方、日本の人口は減少しているとは言え、未だに世界10位の127百万人です。高い教育度に支えられたこの「人的資源」こそが、日本の将来の国力を支える基盤になります。但し、日本の人口は2009年から減少を始め。2014年までの6年間で百万人減少しました。この傾向が続けば、2050年には108百万人(16位)、2100年には84百万人(29位)になると予想されています。効果的な対策が求められる所以です。
次に米国です。平均寿命は79歳(36位)ですが、総人口に占める65歳以上人口の比率は、日本の25%に比べ、ここ20年間、12~13%の範囲で漸増に留まっています。また、米国の強みは、先進国の中で人口が今後も相当増加すると見込まれる数少ない国であることです。米国の現在の人口 は316百万で世界3位ですが、2050年には401百万、2100年には462百万人と予想されています。これは、米国では引き続き将来への希望、「フロンティア精神」が維持される可能性を示すものです。ちなみに、このような人口増にも拘わらず、2050年の時点で、米国の人口はナイジェリアに抜かれ、世界4位になると予想されています。
中国はどうでしょうか。平均寿命は75歳(67位)ですが、中国にとっての問題は、老齢化が意外に早く始まり、場合によっては本年にも、依存指数が増加に転じる可能性が指摘されていることです。また、中国の老年人口指数は、約30年遅れで日本の傾向を辿っており、2045年前には中国は日本の現在の状況(40%)を経験すると予想されています。中国で介護制度や年金などの充実が急がれる所以ですが、そのためには、日本の経験を活かす余地が十分あるのではないかと思います。
一方、人口については、中国は現在世界第一位の1361百万人ですが、2028年にはインドに抜かれ2位になり、2030年に1453百万人でピークを打った後、2050年1385百万人、2100年1086百万になると予想されています。
インドは、人口面、老齢化面共に、当面成長志向です。現在の平均寿命は66歳で139位と未だ低いですが、今後上昇が予想されます。人口ボーナス(依存指数の低下傾向)は2040年頃までは続くと予想されており、経済成長には良いニュースです。65歳以上の人口比率も、未だ5%ちょっとです。
人口は1243百万人で2位ですが、2028年には1454百万人で中国を抜き、2050年には1620百万人と予想されています。なお、インドにおいても人口は、2063年に1645百万人でピークを迎え、2100年1547百万人との予想です。
人口動態だけからみると、ロシアの状況は大分厳しいです。平均寿命は未だに69歳で122位。男性に限ると63歳で142位です。人口は144百万人で日本を上回る9位ですが、人口は1997年から減少し、2006年までの10年で5.5百万人も減少しました。最近人口は微増に転じていますが、長期的には、2050年で121百万人(15位)、2100年102百万人(23位)と、引き続き落ち込みが予想されています。
最後に、ベルギーはどうでしょうか。平均寿命は80歳(29位)。65歳以上人口の比率は約欧州中12位の18%ですが、日本に比べれば高くありません。一方、人口は11百万人(71位)ですが、1987年以降増加し、2014年までの18年間で百万人以上増えており、2050年には12百万人、2100年13百万人と予想されています。やはり、ベルギーは、小規模ながらも、キラリと光る国でした。
注1.平均寿命は、WHO統計2012年版による。
注2.人口は、IMFWorld Economic Outlook 2014年10月版による。
注3.人口増減予測は、国連World Population Prospects 2012年改訂版による。
注4.老齢化関係は、世銀統計、国連World Population Prospects 2012年改訂版等による。
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