第三十八回 「Brexit」、後(のち)、「お祝い事」
2016年6月27日
Brexit!!!
「お祝い事」のお話をする前に、最初に一言申し上げます。6月23日の英国の国民投票の結果、約4%の差で、英国民は、英国のEUからの脱退の道を選択しました。これは、欧州のみならず世界的に「ショック」な出来事だったと言えるでしょう。
短期的なマーケットへの影響は既に明白ですが、同時に、(またはそれ以上に、)難民、テロなど既に色々な問題を抱える欧州が、今後少なくとも2年に亘り英国のEU脱退を巡る交渉などに多くの時間を割かれること、その間、常に「不確実性」を抱えながら走り続けなければならないことが心配されます。
一方、英国のEU脱退が他国にドミノ的影響を与えるのかどうかは、今後の脱退交渉の行方などの不確定要素にもよるので、即断はできないでしょう。これがEUの将来の統合の方向性に与える影響も、慎重に見極めていく必要があると思われます。
前回のLFBで申し上げたように、日本は強い欧州・EUを必要としており、より団結した欧州・EUの方が、より強く、世界でより意味のある地位を占めることができる、というのは明らかだと思いますが、英国のEU脱退が決まった以上、それに応じた対応を取らなければならないのも、また現実です。
英国はNATOの一員で有り続けるのですし、引き続き欧州の中で重要な国であり、日本との二国間関係も緊密なのです。今、私達には、冷静に、一つ一つの問題を議論しながら解決していくことが求められているのだと思います。
お祝い事;二つの叙勲式
それでは、本題に移ります。前回のLFB以降、今年の春に日本の勲章を差し上げたベルギーの方お二人を、それぞれお祝いする会を主催する光栄を得ました。
まず、最初は、日本でも有名なシャンソン歌手でいらっしゃるサルヴァトール・アダモさんです。アダモさんは、国籍はイタリアですが、ベルギーで育ち、国民的な歌手になられた方です。これまでの日本との関係は、半世紀を越えます。1963年、20歳で初めて訪日して、初の日本公演を行ったアダモさんは、これまで38回訪日して500回以上の公演を行っています。
アダモさんの素晴らしいのは、全ての曲が自分のオリジナル曲であることです。70歳を超えた今でも、新しい曲を生み出しておられます。中でも日本では、何といっても、「雪が降る」が有名ですね。ちなみに、ある時、アダモさんが日本で飛行機に乗っていた時に、たまたま機内で「雪が降る」がかかったことがあったそうです。彼は、少し「いたずら心」から、隣にいた日本の人に「これは何の曲ですか?」と日本語で聞いたところ、その日本の方は「これは、有名な日本の歌ですよ。」と答えたそうです。アダモさんが良く紹介される「良い話」です。
もう一人の方は、合気道家のルクレールさんです。日本では余り知られていないかもしれませんが、欧州、中でもベルギーでは、合気道が非常に盛んです。私は、恥ずかしながら日本では余り合気道の稽古を拝見する機会が無かったのですが、ベルギーに来てから、何度か稽古の見学に呼んで頂きました。ベルギーや他の欧州の方々が、粛々と稽古に励む姿は、非常に印象的です。合気道は、他の日本の武道と同様に、確実に欧州に根を下ろしていると思います。
中でも、ルクレールさんは、ベルギーで唯一の合気道7段の保持者です。また、欧州で二人目、ベルギーでは初めて「師範」になられた方です。14歳で合気道を始められ、21歳には、既に指導者になられという経歴は素晴らしいと思います。というのも、ルクレールさん自身がおっしゃっているのですが、重要なことは、この合気道を次の世代に繋いでいくことだからです。ルクレールさんのこれまでの弟子の内、黒帯の方は既に100人を越えます。20年前にルクレールさんが自ら立ち上げた国際合気道サマーキャンプは、今では、300人以上が参加する規模になっています。
欧州の文化であるシャンソンを日本に紹介し根付かせたアダモさん、日本の文化である合気道をベルギーに紹介し次の世代に繋いでいるルクレールさん、どちらも、日ベルギー友好150周年の記念すべき年に勲章を差し上げるに相応しい方だと思います。どうもおめでとうございました。
|