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第四十ー回 リールを知っていますか?

2016年9月8日

訪日観光客

  もう、夏の観光シーズンも終わりに近づいています。ブリュッセルでも、長袖で無いと涼しすぎる日が多くなり、日没の時間も、日一日と早くなってきています。

  日本とベルギーに直行便を飛ばしておられる全日空の方に伺うと、今年、日本から欧州を訪れた観光客の方々の数は、残念ながら、欧州各地でのテロ事件の影響を受けて、やはり伸び悩んでいるようです。一方、ビジネス関係のお客様については、暫く前から、過去の水準に戻ってきているようです。また、ブリュッセルを,乗り継ぎや欧州へのイン・アウトの場所として使うビジネスマンの方々が増えてきていることも聞きました。

  しかし、そんな中でも、エコノミー・クラスの搭乗者数は、相当回復していると聞きます。それは、ベルギーから日本を訪れる観光客の方々の数が増えているからに他なりません。日本政府観光局(JNTO)の最新の統計によると、今年1~5月のベルギーからの訪日客数は、11,600人余りで、昨年の同時期に比べると27.2%アップ。このままのペースでいくと、一昨年から28.6%上昇した昨年の24,000人強を更に上回り、30,000人超えを狙う勢いです。

  年初に私が個人的に申し上げた50,000人というのは、少し意欲的に過ぎたかもしれませんが、例年、7~8月のバカンスシーズンには、ベルギーからの訪日客数は大きな伸びを示しているので、その数字が発表されるのを期待して待ちたいと思います。

リールを知っていますか?

160908_Lier2   私も、この夏の間、ベルギー国内を含めて、小旅行をしました。その時に見つけた「秘密」の一つを皆さんに申し上げたいと思います。

皆さん、リールという町を知っていますか? リールと言えば、国境を越えた北部フランスにあるリール(Lille)がまず思い浮かぶかもしれません。美しい広場が有り、ルーブルに次ぐ規模と言われる美術館もあり、日本語学科を備えた有名な大学のある美しい町ですね。


160908_Lier1.jpg  
 でも、私が申し上げているのは、ベルギーの町リール(Lier)です。この町は、皆さんもご存じのアントワープから南東に約10キロ、ブリュッセルから北北東に車で約1時間(約50キロ)行ったところにある,小さな町です。この町は、フランダース地方の政府観光局とオランダ政府観光局が日本人向けに出している観光ガイドのHPには載っていますが(https://www.hollandflanders.jp/newsletter/6869/)、日本で刊行されている通常の旅行ガイドでは、見かけたことがありません。

160908_Lier3.jpg 私も、ある友人に連れて行ってもらわなければ、全く知らずにいたと思いますが、この町は、とても美しくて、かつ、面白いところなのです。





 


前世代コンピューター

  この町の観光スポットの第一は、何と言っても、町中の小さな広場の端に立つ「ジンメルの塔」です。この塔は、1888年にリールで生まれたルイス・ジンメルさんが、今から86年前に1930年に作ったものです。一言で言えば,時計台なのですが、これが普通の時計台では無いのです。中央には,通常の時計があるのですが、その回りに、色々なことを示す12の時計が配置されています。その12というのは、次の通りです。

① 太陽時(太陽が一番高く上がる時を正午とする時間)と実際の時間の差を示す時計。年に4回ゼロになる。
② ゾディアック(黄道帯上の星座)の位置を示すもの。1年に一回りする。
③ ユリウス暦による太陽の28年周期を示すもの。28年に一回りする。
④ 週のどの日かを示すもの。1週間に一回りする。
⑤ 昼夜の境を地球儀で示すもの。
⑥ 月を示すもの。1年に一回りする。
⑦ 日にちを示すもの。31日に満たない月には、そこから1日に自動的にジャンプする!
⑧ 四季を示すもの。
⑨ 潮の満ち引きを示すもの。1日に約二回りする。
⑩ 月齢を示すもの。
⑪ 月の満ち欠けを示すもの。
⑫ メトン暦(年の同一日に月相が一致する周期。約19年。)を示すもの

  そして、何と、これら全てを、重りによる一つの動力源から正確に動かしているのです。その仕組みは、塔の中で見ることが出来ます。コンピューターなど無かったこの時代に,驚くべきことだと思います。
  ちなみに、この塔は、毎日正午に、片側の窓が開き、過去のベルギーの王様やリール市長の顔の絵が回りながら見られると言うことで、私たちも、正午を目指して現地に到着。時計台の下で待っていたのですが、あらあら不思議・・・その窓は、正午になる前から、ずっと空いたり閉まったりして、ずっと色々な顔の絵を示していたのでした。係の方に聞いてみると、「あ~、これ、最近故障しちゃってさ・・・。」とのこと。これが、ベルギー的な愛嬌で、とても微笑ましかったです。
  この町には、他にも、フランダース地方の他のものと一緒にユネスコ世界遺産に指定されたベギン修道院跡や鐘楼など、面白い見所があります。  

  日本人の皆様、ベルギーの方が日本を訪れる頻度に負けないように、是非ベルキー国内を色々散策してみてください。ブリュッセル以外にも,楽しめる場所が沢山ありますよ。

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