第四十九回 まだまだ続く
2017年2月20日
日本とベルギーの友好150周年である2016年は既に終わり、今や、2020年の東京オリンピックを次の関係強化の目標にしている、ということは、折に触れてこのコーナーでも申し上げています。しかしながら、日本とベルギーの関係の深さからでしょうか。今年になっても、日本に関係した色々なイベントが目白押しです。その中から、私が出席させて頂いた最近のいくつかのイベントをご紹介したいと思います。
「魂入れの儀式」
1月28日には、ベルギー西部の都市トゥルネーの操り人形博物館に伺い、文楽人形の「魂入れの儀式」を見せて頂くという貴重な経験をしました。これは、パーツ毎に作成された文楽人形を組み立てるに際して、人形に「魂を吹き込む」ための儀式です。
このためにわざわざ日本からおいでになった浄瑠璃人形遣いの勘緑氏によれば、この儀式は日本でも通常は公開されないのですが、色々悩まれた末に、この博物館がベルギーで初めて文楽人形を公的なコレクションに加えたことを記念して、実施することを決断された由です。
儀式と同時に、驚かされたのは、ベルギー人の方々とのコラボレーションでした。今回のトゥルネーでの儀式のために特別にアレンジされた、ベルギー人チェリストの演奏にあわせて、魂を入れられた人形が舞う洗練された動きは、息をのむほど素晴らしいものでした。このチェリストの方と勘緑氏は、同氏が活動のベースとしておられる香川県で出会い、今回が二度目のコラボと聞きましたが、後から演奏が即興だったと聞き、その息の合った様に二重に驚かされました。
更に、今回の人形の舞に際して、足を担当したのは、ベルギー人の若者でした。そもそも、人形浄瑠璃の世界で外国人の弟子を取ること自体、勘緑氏が初めてだと聞きました。そもそも、足の担当は、主役の人形遣いの心持ちと動きを読んで、それについて行くことが求められる難しい役割ですが、非常にうまくこなしておられたと思います。月並みですが、色々「感動した」機会でした。
ウエルカム!明治神宮
翌1月29日には、ブリュッセルのボザール劇場で、明治神宮による雅楽・武道公演が開催されました。実は、明治神宮の方々は、当初、昨年4月にお出で頂く予定だったのですが、3月のブリュッセル連続テロ事件の影響で延期になった経緯があります。
個人的なことになりますが、実は、明治神宮は、私の東京での家から歩ける距離にあり、中を散歩したり、時々武道場などにも伺ったこともあります。そして、私の誕生日11月3日は、明治天皇陛下ご生誕と同じ日です。明治神宮の方々が、一度のキャンセルの後、厳しい日程をやり繰りして、わざわざブリュッセル訪問を実現して頂いたことは、色々な意味で嬉しく、また、有難い事でした。
公演は、明治神宮の英語の紹介ビデオ上映後、雅楽の各楽器の紹介、演奏、舞と続き、さらに演武が行われました。さすが、海外で幾度となく色々な公演講演をこなしておられるだけあって、非常に良く練られた、素晴らしい公演だったとおもいます。私自身にも勉強になりましたし、雅楽に初めて触れるベルギーの観客の方々にとっても、とても分かり易かったと思います。
リエージュと言えば・・・
更に、1月31日は、今度は、ブリュッセルの南にあるワロン地域の中心的な都市のひとつであるリエージュに伺い、その名も「リエージュ劇場」で、梅田宏明氏(振付師、ダンサー、ビジュアル・アーティスト)によるダンス公演「Holistic Strata & Split Flow」を鑑賞しました。
梅田氏によるパフォーマンスは、リエージュ劇場での「IMPACTプロジェクト」(舞台芸術と創造技術の融合をテーマとした国際プロジェクト)のオープニングにあわせたものです。梅田氏自身の振付によるダンスと、それに合わせ、これもまた梅田氏自身が作成したコンピュータを駆使して展開される種々のグラフィックは、まさに、視覚芸術と身体芸術の融合で、まさにIMPACTプロジェクトの幕開けにふさわしいものだと思いました。
ちなみに、このリエージュ劇場は、東京オリンピックのロゴを巡って、一時、日本のメディアに毎日のように登場していた劇場です。劇場関係者からは、「日本のことが大好きなことだけは誤解してもらいたくない。」という気持ちを込めて、当時作成した「We 💛 Japan」のTシャツを記念に頂きました。
まだまだ・・・
そして、2月下旬には、大島衆議院議長のご招待で、ブラッケ・ベルギー下院議長とそのご一行が日本を訪問されます。ブラッケ議長は、日ベルギー友好議連のベルギー側議長でもあります。訪問が素晴らしいものとなり、日本とベルギーの友好をさらに強める機会になることを祈っています。
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